【2日目:VIAとロッキー山脈】
どこまでもひたすら山が続く。雪化粧された山々は綺麗でとてつもなく長かった。
ロッキー山脈の麓を走るVIAレール。時たま野生の動物が姿を現し、乗客たちを大いに沸かせた。
朝、目が覚めたら雪景色が一面に広がっていた。昨晩は生涯
初めて電車で過ごした。とても寒かった。外の気温が零下30
度らしい。にもかかわらず車内は冷房をかけていた気がする。
通風孔の風が冷たかった。外の気温が冷たすぎるので暖房が
冷たくなったんだろうか?それとも暖房をかけると、外部との
温度差でまずい事があるから、外気より高い冷房をかけていたん
だろうか?そんな疑問を抱きながら、展望車で朝のコーヒーを
飲んでいた。とにかく展望車からの眺めは格別だった。
【2日目:VIAで物思いにふける】
ジャスパーを過ぎた辺りからロッキー山脈が姿を消した。雪に覆われた森が湖が麦畑が淡々と続く。
天候は次第に悪化していき、まともに景色が見れない程、雪が吹れた乱れた。そしてこんな日の夜は
誰だって思いが沈むはず。
人生はアートだ。バンクーバーのホステルにいた頃、
老人が語りかけてきた言葉。もしそれが本当なら自分は
ガラクタばかり集めている気がした。一体何を額縁に入れる
事が出来ようか。その老人は昔教師をしていたらしい。彼に
とっては生徒の一人一人がアートだそうだ。そんな話を思い
出していた。少し感傷的になっていた。何故か悪い事ばかり
が頭に浮かぶ。吹雪は一向にやむ気配がない。今夜はいつも
より多めに酒を飲んだ。
【2日目-3日目:VIAにも休息が必要】
列車はエドモントンで1時間ほど停車した。燃料補給のためだ。
2日目の夕方のことだった。
昨晩の嵐も収まり、雪がしんしんと振っていた。
駅構内にはドリンクバーが設けられ、駅員さんいわく、少し遅い
クリスマスプレゼントだから飲んでくれとの事だ。ここにはメモ帳が
置かれていて、誰でも好きな事を記帳できるようになっている。オレも
少しではあるが、記念に下手糞な英語を刻ませもらった。ページをめくると
旅人達の旅の証跡や、家族へ向けたメッセージが多数記されていた。
そう言えば、列車内で会話をした旅人達の半数は家族の元へ帰るとの事だった。
【3日目:VIAと音楽家】
列車はウィニペグへ到着した。ここでは30分程停車するようだ。列車を降りると凍てつくような寒さが襲ってきた。
ウィニペグはマニトバ州の中でも比較的大きな町だが、冬場の気温は零下20度に達すると言う。この町だけでなく、
カナダ東部の冬はかなりきつい。冬場の間だけ西へ移る人がたくさんいるようだ。
横の席に大きなバイオリンのような楽器を持った女性が座った。
プロの奏者でこれからモントリオールへ向かうという。世界中を
転々としているそうだ。その女性は楽器を自分の傍らに置いていたが
一時も手を話す事はなかった。世界で3番目に大切なものだと言っていた。
【4日目:VIAとお別れ】
トロントが近づいてきた。3泊4日を共に過ごした旅人達とももうすぐお別れだ。
これから家族に会いに行く人や旅をしている人など、色んな人がいた。もっと英語が分かればもっと楽しむ事ができただろう。
トロントの街のネオンが目に入った時、車内でいっせいに歓声が沸いた。
トロントへついた頃には夜の9時を回っていた。地図を頼りに
ユースホステルへ向かう。寒い中1時間程彷徨ったあげく、どこに
いるのか分からなくなった。人通りもほとんどない。通りすがりの
マックで一息つくことにした。大きな荷物を傍らにおき、地図を眺めて
いると、一人の女性が声をかけてきた。日本の文化に興味があり、
職場でも日本人の友達がいる、おまけに旅好きだと言う。ホステルまで
の道のりを尋ねたところ、そこまで誘導してくれるとの事だ。10分程ある
けばホステルに到着した。その間に日本語を3つ程教えてあげたが、感激
してくれたようだ。別れ際に、また何か困ったことがあれば連絡をくれと
名詞を渡してくれた。とても親切な人だった。